「RADICAL PARTY - 7ORDER -」
「RADICAL PARTY - 7ORDER -」拝見しました。7ORDERプロジェクトのうち、森田美勇人くんスピンオフ作品という位置づけ。フォロワさんにお誘い頂いての観劇なので7ORDERシリーズ自体初めましてだったんですが、脚本のあて書きがすごい。ほぼほぼ本人設定でした。
ダンスのレベルがま〜〜〜高くて。特に2幕のライブショーは、公演これだけでもいいんじゃないかって思っちゃうような時間でしたね。めちゃくちゃネタバレします。
1幕:あらすじ
人類をA〜Zにクラス分けする、AZ法が施行されたとある国のお話。スクラップ置き場で拾ったベースを戯れに弾いていた主人公ミュートは、アナーキードッグと呼ばれる風紀監視隊(実質はほぼチンピラヤンキー)から「法律で禁じられているバンド活動*1を行なっているのではないか」とあらぬ疑いをかけられる。天涯孤独なミュートが仲間はいないと言っても、信じようとしないアナーキードッグ。執拗に追い回されていたところ、アゾと名乗る謎の女とその仲間たちに助けられる。
アゾはクラス分けによって不平等を強いられていることに不満を持ち、「世界をダンスで変える」をテーマに活動する反社会的集団「ウォー・クライ」のリーダー。同じく不満を持つZクラスの仲間、常識人のドギー、熱い男ブレイク、優しいゲイのワックとともに廃ビルを拠点として秘密裏に活動している。主な活動は、裏動画配信サイトでダンス動画を流すこと*2。
そこへ突然、動画を見てウォークライのファンになった!僕も仲間に入れて欲しい!とやってきた謎の少年ポップも加入。
世間では政治家シンドウが話題になっていた。ミュートはウォークライのメンバーが異常にシンドウを嫌っていることに疑問を抱く。アゾに問いかけたミュートは、そこでシンドウの正体を知る。今でこそシンドウはZ嫌いのマニフェストを打ち出す政治家だが、かつてはアゾ(兄)と共にウォークライで活動していたZクラスのゴッドという若者だったのだ。
元の身分を隠し、掌を返してZを足蹴にするシンドウの新政策に、ウォークライのメンバーは激昂。社会的報復を考え、全員でシンドウの政治資金パーティに乗り込むのだった。
キーワードについて考察してみる
ラジカルとアゾ。この二つはこの舞台のキーワードなんだろうなと思ったので、ちょっと考察。化学だめだめなので本当にざっくりです。
ラジカル(radical)
ラジカルは「急進的な」とかそういう意味。政治的用語として「根本からガラッと変える」意味合いを持つ。
実際にZクラスでは到底できなかったはずのダンスライブ(2幕)ができるようになり、AZ法に支配される世界を変えた。という筋書きなのでまさにラジカルの言葉通り。タイトルのパーティーは、実際にパーティーをすることと、政党のパーティーをかけてるんだろうな。
化学用語的な考察としては、ラジカルは原子とかそういうものの本体のことを指して、ラジカル反応は化学反応/変化のことって感じの認識*3でいいんじゃないかな〜。基本的にイオンとか原子は、内部にペアを持っている。それが片方だけしかないとバランスが悪いので、本体はペアを探そうとして化学反応しやすい性質になるよ。という仮説。
アゾ(兄)を失ったアゾ(妹)が、アゾ(兄)そっくりのミュートに惹かれたのも納得の反応。アゾ(妹)はもともとペアを失っている不安定な状態だったからね。
アゾ(azo)
アゾの名前のもとになった「アゾ化合物」は、ラジカル開始剤*4の一種。ミュートがきたことによって、アゾ(妹)や他のメンバー、ポップたちまで巻き込んで一致団結。新たな反応を生み出した。ダンスによって世界が変わる結末も、反応によって別物になる過程と似てるとは思った。
アゾ化合物ってとても鮮やかな色をしているらしい。染料とか、顔料もあるみたい。ピグメント!って感じの彩度高い色でとても綺麗。
映像演出で美勇人くんたちがいろんな色に染まるのは、ここからきてるのかな〜?と。7ORDERのプロジェクト自体に、色へのコンセプトを感じるので。こういうのもリンクさせてるんだろうな。美勇人くんのダンスで色を投影させているのが、いろんな色を混ぜて吸収していくって感じで、最終的に7ORDERの一人として成長していく過程を見ているみたいだったな。
ラジオカセットレコーダー
ラジカセの音の響きもラジカルにかけてるのかな〜は、もしかしたら考えすぎかもしれない。でも、たぶん何かのモチーフになってるよね。夏の7ORDERの方の舞台で使われてたのかな。
伏線と言うにはシーンそのものの主張が強いので、モチーフとかアトリビュートって言う方がしっくりくる気がする。
AZ法についての疑問
26階級って多いな。冠位十二階の倍以上じゃん。職業に左右されず、国民すべてクラス分けをした場合は、大体5が相場だと思うんですよ。職業による特級含むと10超える例はあるけど。
今作品で出てくる一番高い位がシンドウのHクラス。それも「ミドルクラスじゃん!」「あともう少しでアッパークラス」ってやりとりからして、職業別の身分階級は存在しないんだろうなと。26階級もあるなら、どういうレーティングパラメータ設定してるんだろうね。ただお金ってわけでもなさそうだし、社会貢献度?PSYCHO-PASSのシビュラシステム*5みたいな感じなんだろうけど、クラス別の人口分布どんな感じなんだろうね。
2幕:ライブショー
ウォークライとは別の道を選んだミュートは、後に7ORDERに。「お前ら(ウォークライ)とは、またどこかで会える気がする」の台詞通り、今回のライブで再会を果たす。政治家のシンドウ、弟ポップの協力がなけりゃ、俺たちが梅田芸術劇場を借りるなんて無理だよ!というメタ発言も笑。
踊りっぱなしのライブショーはやっぱり良い!素敵!7ORDER要素もあるんですが、1幕の設定も守ってるのがなおさらいいな〜って思いました。7ORDERとしての居場所を見つけたミュートと、新しい世界で地位を確立させたウォークライ、それからシンドウとポップ。全員がキャストとして揃っているのがいい。お互いそれぞれで頑張って、パワーアップして再会するパターンってなんか素敵だよね。
7ORDERの曲は初見なんですが、全て丸く収まった後で今の仲間である安井くんと共にperfectって歌う美勇人くんが、なんか良かったな。それはもう文句なしにperfectじゃないですか???安井くんの髪色ミントブルー?鮮やかすぎてびっくりしちゃった。金髪の印象が強かったので、一瞬見間違えたかと思った。
踊れるキャスト陣
初見キャストが多かったんですが、踊った瞬間に「あ〜これ本当に踊れる人めちゃくちゃもってきたな」ってことはハッキリ理解した。主演が美勇人くんに2ndクレジットが万美ちゃんなので、そりゃあ踊るだろうな、とは観劇前から思っていたんですけどね笑。
みなさん動いた時の滑らかさ、静止した時の美しさが本当に素敵だなと思いました。見栄えするダンスだ。
初見キャストの中では、特に福澤さんの踊りに目を惹かれた。へえ、振付師もやってるんだ〜!と出演作チェックしてたらハイステにいた。なるほどね……。それはもう、納得の安心感だわ。
仲万美ちゃん
万美ちゃんの手首の可動域の大きさと速度がやっぱり異次元。ヴォーグかっこいいな〜。女優になった時はダンス観る機会が減ると思ってたけど、こういう形で観れると嬉しい。ニュースクールっぽい振付踊ってるの新鮮だな。
森田美勇人くん
美勇人くんの踊りって本人の特性がものっっっすごく出るよね。振付と言うより、踊り方。美勇人くんの振付を他の人がやってもなんか違う。体のパーツの大きさも、使いかたも、特別。そのオプション込みの振付だな〜って感じ。
基本的な動きはヒップホップ系っぽいけど、ターンのキレとか背中の伸びはジャズだなあと思うし。ぴん、とした時の品の良さが梅芸に似合うなあと思いました。
本当にね、ソロ映えするんですよ。この人の踊りって本当になんなんだろうね。踊った瞬間に急激に目が惹かれる。一人で踊ってても舞台が広く感じない。あの梅田芸術劇場メインホールで、ソロダンスしてステージが広く感じないってすごくない?奥幅狭めてても、横幅は変わらないのに。舞台構成、映像演出もあるけど、そもそも美勇人くんのフィジカルと踊りの存在感が大きいんだろうな。
私がちゃんと本人のパフォーマンス見たのが去年のはじめくらいかな?もともとダンスうまいな〜とは思っていたけど、その頃に比べてまた格段に表現力が上がった気がする。限界がない人だな〜。美勇人くん自身も今回いろんな人にたくさん教えて頂いたと挨拶で言ってたんですが、あのメンバーに揉まれたらもう吸収するところだらけで楽しいだろうな。トップクラスの人たちばっかりだし、ジャンルもいろいろなので。
あと、美勇人くんって口下手だけど、やることはきっちりやるから、何かとかわいがられるんだろうな〜って思った。ダンサーに愛される人だよね。トラビスもそうだったけど。言葉じゃなくて、グルーヴとかの非言語への共感が強い人に好かれてる気がする。そこまで交友関係知ってるわけでもないんですが、カテコで「も〜頼りないなあ!(笑)」と文句言われつつもカンパニーから構われてる様子を見て、そう思いました。このカンパニーで良かったね。