愛してやまない

観劇ログ、はじめました。

NODA・MAP「Q:A Night At The Kabuki」

NODA・MAP「Q:A Night At The Kabuki」観劇しました。二つの世界軸による戦国版ロミジュリと言えばいいのか、アナザーストーリーだと言ってしまうべきか。
 
歌舞伎ではないが確かにカブいてはいた。劇伴がQueenなんですが、ま〜〜、これも良かった。Queenの曲を使う舞台って(そもそもオマージュが多いから)曲と映画にもっていかれてる印象を受けることが多かったけど、これは全然別物。音楽がQueenの舞台。溶け込んでたなあ。
 お話も演出も、言葉から表情の一つ一つが愛しくて素敵でたまらない三時間。高次元から押さえ付けられるような芸術で、私の好きな演劇だ。考えがまとまらなくて散文詩みたいになってしまう。

概要

未来からきたロミジュリが、悲劇にならないように過去(今)のロミジュリを手助けするけれど、なかなか運命は変わらなくて。合戦や戦争に巻き込まれて愛する二人が交われない。たった数日で燃え上がる恋と、届かない手紙。画策しても結局、同じルートにのっている運命。30年越しに届いた白紙の手紙の意味。

感想

公式では「ロミジュリがもし生きてたら」な後日談って言ってたけど、そんな軽いものではなかった。うまく言葉にできない。たかぶった感情がそのまま涙になってしまったことが悔しい。もやもやのまま腹の中に飼っていたかった。

若者の突発的な恋と暴走とヤケクソって何にもいいことないね。あとは己の欲望によって他人を動かそうとする回りくどい大人達。愛情と憎しみに満ち満ちた世界と詩的な台詞まわし、空気の視覚化。行動の繰り返し演出。起きて点呼して働いて配給パン食べてまた働いて手紙を書いて寝る、のループは見てる方も気が狂いそうだった。キャスターベッドを使った比喩と動きの効果。世界の主軸が変わったことをケープの色で分ける。

言い足りないくらい、もうすべてがすき……。圧倒的な美がある。ずっとふざけてるのに、なんでこんなに美しさが損なわれないんだろう。今年一好きな舞台が更新されてしまった日です。
 
広瀬すず、今回が舞台初って本気で言ってる?内側から光るような美しさ。見ているだけで自分が生きてるのが恥ずかしくなる。世が世なら、今最高に美しい状態で剥製にするべきだと言われて美術館で飾られてしまうんじゃないか。そんな残虐な王様がいないことに安堵してみたりして。

野田さんって間の取り方とか、リズム・速度に対する感覚が厳しそうなイメージがあるんですが、広瀬すずも志尊淳も完璧だった。二人とも映像多めで、そんなに舞台出てる印象がなかったけど、舞台もできる人たちなんだなあ。

おぼろげに残る台詞を反芻しながら、どうしようもなく愛しさが残るんだけど、表現出来る言葉の持ち合わせがないから、はらはら泣いてしまう は〜〜美しくて、いい演劇だったな。私は松たか子のまるで歌ってるみたいに滑らかに話す台詞と、感情が眼球と瞼に直結してるところが本当にだいすきなんだ。

追記

観劇が終わってしばらく経つ。憎しみを目に浮かべながら一心に空を睨みつける松たか子が、ちっとも瞬きしないので立ち続けていたのが強く印象に残っている。怒りを抑える瞼への力み。顔中が強張って、一瞬たりとも忘れるもんかって覚悟があって、悔しさが涙になってこみ上げてきそうけど絶対に泣かない‬。ブロロロ……飛行機の音が耳鳴りのようにこびりつく。真っ赤な空。息が苦しくなって、目が逸らせなかった。いまもなお、野田地図の世界に丸呑みされている。