愛してやまない

観劇ログ、はじめました。

「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」観劇しました。開演5分前からバンドセッション(撮影OK)で、イツァークによる観劇マナーのお願い→本編開始の流れ。ミュージシャン本業の本気セッションに、最初から体が揺れちゃう。これをライブハウスで聞く贅沢!その後もずっとわくわくが止まらなかった〜!こんなに舞台上に集中できたの久しぶりかもしれない。
 
 今のところ今年見た中で一番好きだな(2019/09/21時点で)。舞台というよりライブに近い感覚になる。そもそも世界観がヘドウィグのワンマンライブって設定だから、観る側もヘドウィグのショーを見にきた観客になれるんですよ。観客にも知らぬ間に役を与えてる舞台って最高じゃないですか?すっかり世界観の虜。没入しました。

 

ストーリー

 プラトンの人間球体説(人間には生まれながらに不完全であり、本来完全体になるための片割れが存在する)を寝物語に聞かされた記憶から、いわゆる運命の人を探すヘドウィグの愛と自由を求めるストーリー。性転換手術に失敗して1インチ残ってしまったばっかりに、男にも女にもなれなかったヘドウィグの笑顔の下の切なさが伝わってきてぎゅううってなる。
 

テーマの深掘りが止まらない

 終盤、ヘドウィグはどんどん裸に、対してイツァークはヘドウィグとの誓約で禁じていたドラァグクイーンの姿を取り戻す。これこそが「そのままの私を愛してよ!」ってことなんだろうなあ。ヘドウィグはドラァグクイーンやってるけど、本当にルーツを辿るなら男の姿のままでも良かったんだもの。下ネタでしきりに「お口でする」って言うヘドウィグにとってのセックスって、なんかすごい悲しいものだったんだろうな。たった1インチ残ってるだけで拒否されたトラウマが今までどれだけヘドウィグを傷つけたんだろう。笑ってないと泣いてしまうよね。

 ある意味プラトニックを守ることで自己防衛に繋げてたのかもしれないし、だからこそトミーみたいな敬虔な信徒に惹かれたのかも。めちゃくちゃ哲学テーマ含んでて最高の作品だな……歌詞聞き取れてないところもあるからちゃんと読み解きたいな……
 

ワンマンライブの世界観

 曲中、存分に立って盛り上がってもらって構いませんスタイルだから、拳上げたり歓声上げたり、本当にライブ見にきた〜って感じなんですよ。観客参加型の舞台は今までもあるけど、ここまで世界観に引きずりこまれるタイプは滅多に見なくて楽しかったなあ。バンド隊も演奏が本物なのは当然として、ちゃんとキャスト換算なのが良い。

 ライブ曲終わったら「座りなさいよ!」って叱責(笑)とか、手ひらひらして座ってねってジェスチャーしてくれるから、その後のお芝居もスムーズ。客席に拍手要求しといて放置するバンドとかもある中で、この手厚さには安心して観れたなあ。徹底した世界観の作り込みが心地いい〜!
 途中、みんなで踊ろうコーナーあるんだけど「お手本なんてないよ!」って言われて練習なしで本番一発見よう見まねするしかない(笑)
 

キャストの仕事が良すぎる

 メインの演者はヘドウィグとイツァークの二人だけ。とは言っても、ほぼヘドウィグの独壇場。台詞というより全編ほぼMC+歌なんですが、浦井健治の仕事量が尋常じゃない。ワンマンライブを模しているとはいえ、場面転換もほぼなくこれだけの空間支配と台詞量って、シンプルにすごいな……。
 浦井くんの歌表現の幅がまた良い。甘い歌声も、怒りの咆哮もある。歌唱指導は冠くんとのことだけど、流石だな〜。
 アヴちゃんのあのエキゾチックでセクシーな存在感ってなんなんだろうね。最後のドラァグ姿も似合ってたんだけど、見目が似合う以上に仕草の妖艶さがマッチしてる。何歌わせても器用にこなすし、一見飛び道具に思えて実はめちゃくちゃ汎用性高い人だなあ。表情筋が柔らかいからか、睨みつけたり、傷ついたり、いろんな表情が豊か。
 

演劇をライブハウスで観た感想

 観たことない人はぜひ見て欲しいなあ。すごく新鮮でわくわくする舞台だったし、作り手も良かった。ライブハウスで演劇ってどうかなって思ってたけど、フルフラットでも座席間隔広くて、ステージが高いから全然気にならなかった!とっても視界は良好、むしろ下手な劇場よりよっぽど快適。椅子は簡単なものになるけど、音も迫力あるし、普通に良かったです。また行きたい。
 
 ヘドウィグは決して楽しいだけじゃない舞台なんだけど、それも含めてすっごい私は好きだな〜〜って感じだった。ライブ耐性ない人は辛いかもしんないけど、オルスタライブを半分以上座って観れるって考えたらめちゃくちゃ楽だしね。