愛してやまない

観劇ログ、はじめました。

山田ジャパン「HEY!ポール!」

 山田ジャパン「HEY!ポール!」観劇しました。芸人さん多いだけあって、題材は重いけど、とってもコミカル。
「へーちゃん喧嘩しよ!」から始まる最後のシーンが、もう本当に本当にすきで。脚本書いた山田さん、たぶん私と同じ神を信仰してる。文学的な意味でね。この世のメリバ厨は全員この指とーまれ!って結末、だいすき。

 

一言で言うと、エモい舞台

 公演時間2:10の全部が肌に合うわけじゃなかったけど、台詞が刺さる舞台だったなあ。公演回数少ないけど、この一過性感もなんか切なくていいと思ってしまう笑 エモい〜〜!

推しの話

 山本亮太がポールダンス&踊るだけで元取れてるのに、こんなにちゃんとお芝居されるとね。新しい引き出しを見たなあ。ポールダンスはもう顔溶けちゃった……。
 山田さんが、山本くんが周りに気を遣って明るく振舞っていることと、その裏に隠している闇の部分に惹かれたという点がよく見えて良かった。人間の二面性、が大きめのコンセプトテーマになってるんだけど、ぴったりだなあ。山本さんは役になるっていうより、本質のどこかが似ているから自然に見えるって感じの舞台が多いよね。

あらすじ

 心に傷のある人間が集まるポールダンスクラブ、東京センターポールでそれぞれが抱えている心の闇を告白していく。
 仕事に必死になって妻と言い合いになった後、昔住んでたマンションで妻子が死んでいたことを自分のせいだと抱えこんでいる平汰は、今までずっと心に内鍵をかけて生きていた。6年連れ添った彼女にも打ち明けずに。けれど、結婚生活の年数を彼女に上書きされたくない平汰は、もうすぐ訪れる二人の命日に自殺を考えて……ってお話。

原のインパクトがヤバい

 そうきたか〜!ってゲラゲラ笑っちゃった。プレーンのパンで満足してたのに、バターのおいしさに気付く。でもどんなにおいしくても飽きてしまって、ジャムを試す。それからなんでも手を出した。ごはんとか。のくだりがもうオチわかってんのに、あれはずるい笑 ざっくり、誰とでも寝るよ!って意味なんだけど、ごはんって言われた時の野澤くんがキャッ🙈てなったのかわいかったな〜(野澤くんも抱かれてる)

「生きてる女で一番好き!」

「みのりみのり〜!」って笑顔で呼ぶ平汰もといへーちゃんが、自分の中にある全部のすきのうち、彼女みのりが占めてるのは「全体の2割!」しかないんですよ。6年も付き合っといて!ひっどいなへーちゃん!
 
 でも、へーちゃんにとって、みのりは「生きてる女で一番好き」なんだって!と、ときめく〜……いきてるおんなでいちばんすきなんかあ……そっかあ……。
 ふざけんな!!ってガチギレしたみのりと「私や周りの人に何にも思わないのか!」「感謝!(してる)」とか言い合いしてたら、「だめだ!このまま喋ってたら2割が3割になる!3割になるってことは4割になって、いつか5割になってしまうかもしれない!それはダメだ!(ニュアンス)」ってへーちゃんは怯え始める。みのりの静止をふりきって死への登り棒を登り始めるんですけど。
 ここでいきなり踊り始めたのはちょっとよくわかんなかったけど、ここから結末までのシーンが怒涛なんですよね。
 こんな最高な台詞、今まで聞いたことある?それを、山本亮太に言わせるって誰が想像した?最高。生きてる女で一番好きの話すでにもう20回くらいしてるんですが、たぶん今後も5億回くらいすると思う。
 
 平汰が、みのりを好きな割合が五割になることを恐れるのは、五割=嫁と同率1位になることへの恐怖だと思っていたけれど、五割も内鍵回ってたらうっかり開いちゃうからかもしれないな。内鍵をキーワードとするならば、最後重力に従ってさちよとの思いは完全になるので、あの時点で内鍵が回りきった平汰の中でみのりへの思いは消えちゃうのかな。みのりは平汰の夢を見るけれど、夢の中の平汰は別にみのりをあちら側へは呼ばないもの。(平汰は嫁と娘からおいでおいでされてる)

呪いの話

 序盤で、男の子の一番最初のオルガズムが小学校の登り棒だって説明があるんですけどね。へーちゃんが最後自殺するのって、別に家族を救うためでもなんでもなく、自分が救われたいだけの自己満足=自慰行為なんだよなあ。
 俺が家族を殺したんだ。だから、嫁に言われたように過ごしてやりたい。平汰って、言われたからそうする、みたいなとこある。嫁とまだ付き合ってる時に、私が死んだらどうする?って話で「光市母子殺人事件の旦那さんが理想だよね!」って、忘れないで一生思ってて、私より好きな女を作らないで(ニュアンス)って呪いをかけられてるんだよね。だから、やっぱりみのりは死んだ女に勝てないんだよなあ。

地獄はループする

 繰り返しの繰り返しは嫌だ!って平汰は言ってたけど、みのりも同じルートに乗る。へーちゃんがいる夢にひたって、一日中眠りこけるようになる。でもみのりは聡明な女で、平汰よりは現実を見ているから、夢の中の平汰は家族連れなんだよなあ。結局何しても娘と嫁に勝てないなら後追いする意味はないはずだから、その後みのりの心境変化はどうなるのかな〜。もうみのりはへーちゃんの呪いにかかってしまったから、不幸せにしかなれないんだろうけど。
 そもそも、死んだ嫁との時間の長さが一番だと言いたいから、寝る時間をなるべく長くして起きている状態の一緒にいる時間を短くするって言うへーちゃんの思考、意味わかんなすぎてすっっっごいすき。自己都合でエモの塊……。
 
 この最初と最後のシーンが、人をすり替えて同じリプレイって好き。序盤でリプレイの話が伏線で出てきてるんだけど、このお話は徹頭徹尾平行線の言い合いをして、ちっともお話は転がってないの。伏線が細かい。
 
 東京センターポールの内鍵。

「なんで開いてないのよ!」
「内鍵がかかってるからだよ」

 平行線の理由はここで説明されてて、視点がまったく食い違ってる。平汰の心に入り込めないみのりの嘆きと、内側に原因があるから外からは開けないという平汰。つまり、初めからみのりと平汰はディスコミュ。
 みのりがどれだけ入り込もうとしても、平汰が鍵を開けない限りは入れてもらえない。けれど、妻子への罪悪感が消えない限り内鍵が開くわけはないんですよね。
 
 みのりはしっかり者でエースだから、一個崩れるとたぶん全部ダメになる。たとえあの日平汰を死のポールから引き摺り落ろしても、いつか死んでた。暴露で平行線が崩れてるので。みのりは平汰に代わるダメンズ見つけないとダメね。一人で生きていけるけど、何かに追われないと生の実感がなさそう。

悲劇のヒロイン

 私は結構徳が低い方の人間なので平汰に多少の理解を持ってしまうんですが、あの嫁はやめとけやめとけ、あ〜言ったやん〜って思いながら眺めてしまった笑
 
 平汰はメンタルコントロールが下手なタイプなので、連れにメンヘラ発動されると引きずられるタイプだと思うな〜。一番悲劇のヒロインぶってるのは、平汰かもしれないね。そう考えると嫁と平汰は、似た者同士だったりするのかな。
 劇中台詞の「愛は罪悪感のバーター」が平汰の本心なら、へーちゃんはみのりが自殺した時に、2割が3割になったりするの?しなさそうだな。へーちゃんって前しか見れない人だろうから、嫁と娘がいたらそれしか見えなさそう。つくづく、周りを不幸にする男。
 
 平汰は決めてほしい人だと思うのね。一度それで失敗しているから、俺が間違ってるってことに縛られてる。もともと、さちよの言うことにそれでいいよ系のなんとも言えない返事をする男じゃないですか。あいつ仕事以外にはたいした意見もってないんですよ。明確なものがないの。存在がブレてんの。
 
 みのりとさちよってタイプ違う女なんですよね。二人の共通点は、平汰よりは明確に何をしたいかを持っている点。
 みのりは平汰と近いけど、自分を持ってる人。平汰がみのりに求めたのは母性かな。さちよには家族像が明確にあるけど、平汰って親の匂いがしないんですよね。

平汰は未来のカードを持っていない。

 私はHEY!ポール!が呪いと信仰の話だと解釈したので、性別逆転でも同じような結末になると思う。主人公が望むのは、幸せだった時間への懐古と罪悪感からの離脱だから、未来の話はできない。カードがない。東京センターポール自体は閉鎖的で心の内側に見えるけれど、平汰にとって本当にそうだったのかな?

キャストの話

 野澤くんのスタイル異次元すぎて舞台セットの縮尺歪んだかと思った😳小憎たらしくて、セクシーで、魅力的!いとうあさこさんはカテコ挨拶といい、安心感がすごくて、第一線のプロだな〜って感じ。谷口さんは毎度思うんですが、オタクが好きそうな女が一級品……強いけど、か弱いを両立させる人。