愛してやまない

観劇ログ、はじめました。

六本木歌舞伎「羅生門」

 六本木歌舞伎「羅生門」観劇しました。本格的な歌舞伎は慣れてないので台詞聞き取れるか不安だったけど、そんな心配なかったな。初心者向けでした。現代と昔と時間軸が交錯するし、みやけくんの歌舞伎感がライトだったのでなおさらキャッチーでしたね。

 さすが市川一門。他、本業の方々の言い回しが歌みたいで素敵だなあと惚れ惚れしてたら台詞を聞き逃すことはあった。右團次さんかなあ?体の中でホールみたいに声が反響してるのに、プレスしてるような密度の高い音がする。気持ちいい声。変なこと言うけど歌舞伎ってミュージカルに似てるなあって思ったな。音や震えにも感情がのる感じ。
 
 原作テーマは生きるために悪事を働くこと=正義の基準を誰が決めるのか・人間のグロテスクだと私は記憶してるんですが、今回の歌舞伎は勇気をモチーフとした新解釈で最後の蜘蛛の糸に繋げてるんですね。茨木童子というのが歌舞伎からひっぱってきた演目なのかな。
 原作の救えなさが好きなので、ある意味解釈違いなんですが笑、心の悪をのりこえること(己との対峙)を主軸にまとめた印象。勇気の意味を素直に捉えている。歌舞伎に疎いので解釈の取りこぼしはあるかもしれない。
 
 そしてなにより海老蔵さんがすごくて。なんて自然な方なんだろう。ハッとするほど見目は整ってるし、見得を切るたびに、待ってました!って大向こうが言いたくなる気持ちがめちゃわかる*1。 老婆の変貌ぶりもそうだけど、すごいことをさらっとやる方だなあ。作り物じゃなくて、本当に自然な役自身の重みがあるというか。適した体重が役にのってるんですよ。表現が難しいな。
「大阪初日だからまだ動線が定まってなくて、早替えがギリギリなんだよ!」とか言う海老蔵さんはこちら側に親近感を沸かせるけど、身近なようで身近じゃない。それが空気でわかる。海老蔵さんも絶対に客側に自分の階層を下げない人だろうな。そういう人は見ていてとても安心感がある。偉そうと言うわけでは決してなく*2、芸事に命をかけた人間特有の覚悟のようなもの。
 
 

*1:現代の大向こうの役割って「言いたくなるもの」というより、「お客さんを盛り上げるためのSEの一種」だとは思うのですが。

*2:むしろとても物言いの腰は低い