愛してやまない

観劇ログ、はじめました。

あらすじ「のべつまくなし・改」

 結末以外にも削ったり増えたり、前作から結構変わってます。ちゃんとしたストーリーを確認したい場合は、公演グッズとして販売されている上演台本にてご確認いただければ幸いです。

あらすじ(一幕)

 時は江戸。江戸城浅野内匠頭(清水順二)が吉良上野介(我善道)に斬りかかる事件が起こった。吉良が浅野に対して嫌がらせをしていた事実があったとしても、将軍の前での抜刀は御法度。すぐに取り押さえられた浅野は切腹を命じられる。しかし、本来なら喧嘩両成敗として吉良にも処罰が下るはずの吉良が、この件でお咎めを受けることはなかった。
 浅野という主君を亡くした赤穂浪士たちは、この処遇の違いに激怒。「けっして動くな」という浅野の最期の言葉を一旦呑み込みはしたが、納得はできない。
 なにより「主君を失ったくせにのうのうと生きている、武士の恥さらし」として世間から揶揄されていることが武士のプライドを酷く傷付けていた。
 
 一方、外れの崖で身投げを考えている一人の男がいた。名を近松門左衛門江田剛)。都で劇作家していたが、代表作である人形浄瑠璃曽根崎心中』が大ヒットしたことで、感化された若者による心中が大流行。心中を助長させた危険人物として、都を追放。曽根崎心中の男役・徳兵衛(中村悠希)の人形だけを持って命からがら崖までたどり着いたのだった。しかし、劇作家の道も閉ざされ、他の人形もすべて焼き払われてしまった。もうこれ以上生きていても仕方ない。それならいっそ死んでしまおう……!
 そう思ってはいても空腹には抗えない。地獄に現世の金など持っていても仕方ないと、近くの団子屋に赴く近松。そこで、奇抜な商人・紀伊国屋文左衛門山本亮太)に出会う。
 
 店を繁盛させるために、団子屋と旅役者の一座と結託してステマ用の一芝居打っていた紀伊国屋だったが、その一連の仕込みを南町奉行所の役人・大岡越前松本幸大)とその助手のヤス(村瀬文宣)に見られてしまう。虚偽を明るみに出そうとする正義に熱い大岡だったが、機転をきかせた近松によるハッタリ演技で場を収める。企画力がウリのコンサルタント紀伊国屋は、その近松の即興芝居を気に入り、一緒に「心中コンサルタント」をはじめないかと誘う。
 
 出雲也哉子(武藤晃子)オーナーのドッグカフェ*1を間借りして始めた新事業、「様々な事情で結ばれない恋人たちの心中を偽装し、第二の人生を始める手助けをする“心中コンサルタント“」業は大繁盛。ある日、その話を聞きつけた赤穂浪士のエース、喧嘩屋・堀部安兵衛原嘉孝)は二人に赤穂浪士四十七人分の心中を考えてほしいと依頼する。
 吉良邸へ単騎討ち入りに行った安兵衛は、そこで吉良、および憑依した幽霊の主君浅野と話をし、今回の事件は将軍暗殺を企てる首謀者探しのため、意図的に起こした騒ぎであったことを知る。容疑者を捕らえきれなかった以上、顛末を公表するわけにもいかない。しかし、完全に討ち入りムードの隊員も止められず、それならばと心中コンサルタントに話を持ってきたのだった。
 心打たれた紀伊国屋はこの依頼を快諾。ドッグカフェで寄席をしている落語家の犬屋敷郎府(室龍太)らと共に、大根役者な隊士たちに稽古をつけながら「忠臣蔵」の計画進めるのであった。
 
 来たる十二月十四日、討ち入り決行の日。吉良邸に襲撃した赤穂浪士たちは吉良の首をとったフリをして、対外的に主君の仇討ちを完遂。止め役として配役されている大岡による予定調和の采配により「世間には赤穂浪士切腹。ただし将軍様には切腹したていとして*2世間に公表した」と報告することに。赤穂浪士たちは現在の身分を捨て、新たな人生を歩むこととなる。
 と、円満に大団円を迎える予定が、突如、江戸城でクーデターが発生したとの速報が伝えられる。その忠臣蔵を彷彿とさせる内容に、まんまと自分たちが幕府への謀反に利用されたことに気付く近松たち。一同は、謀ったかのように到着した北町奉行所の成金役人・遠山金四郎景元(竹之内景樹)に一網打尽にされてしまう。
 大混乱の中、紀伊国屋近松は安兵衛に連れられて屋敷を抜け出した。「どうしてこんなことに」「……裏切り者がいたんだ」刀を抜いた紀伊国屋は、近松を斬り付ける。倒れ込む近松に「こうするしかなかったんだ」と言いながら、紀伊国屋は静かに立ち尽くしていた。

あらすじ(二幕)

 かつて軍学者由井正雪(田中精)は倒幕を掲げ、クーデターを起こした。戦が終わり、仕事を失った武士たちの鬱憤*3を爆発させたクーデターは失敗に終わり、由井は自害する。しかし、彼の直属エリート部隊、通称“雪斬六人衆”は彼の意思を継ぎ、もう一度クーデターを起こすために街へ潜伏したのだった。
 雪斬の一人だった紀伊国屋も、身分を偽って町の花火屋へ潜り込んだ。当初は、火薬を集めるための限定的な潜伏のつもりだった紀伊国屋だったが、花火屋夫婦や兄弟子たちの温かさに触れ、次第に自分の今まで信じてきた常識に疑いを持ち始める。夫婦から息子同然に扱われることで初めて家族愛を知った紀伊国屋は、人の役に立ち、他人を笑顔にすることに喜びを覚えるようになっていた。
 
 そんな平和も束の間のことだった。ある日、刀を研ぐ親方(狩野和馬)を見て、紀伊国屋は直感的に「親方は人を斬りに行くんだ」と察する。止めることもできず、親方は粛清しようとした相手に斬られて絶命。怒りに刀を握った紀伊国屋はすぐに仇を打ったが、もう優しい親方は戻ってこない。
 紀伊国屋が帳簿を偽装し、火薬を盗んでいる事実を知りながら「人のために使えよ」と遺言を残した親方に従い、紀伊国屋は火薬を埋め、六人衆として生きることをやめた。
 
 奉行所の牢屋で、紀伊国屋は共に捕らえられた安兵衛たちにそんな身の上を打ち明けた。盗み聞きしていた大岡は「わざと斬ったふりをして、近松を逃したんだろう」と指摘。まだ生きていたのか!近松の才能があれば、処刑を免れるかもしれない!と湧き立つ安兵衛たちを横目に、紀伊国屋は「あいつは来ない」と返す。紀伊国屋は度重なる遠山の拷問と、由井正雪の幻覚に精神を擦り減らしていった。
 
 一度は逃げた近松だったが、ある時、江戸城襲撃の瓦版を拾ったことで一つの疑念が生まれる。江戸城から火はあがったが、襲撃する人間を見たものは誰もいなかった。近松を探しに来たヤスからもらった町についてのメモ*4と照らし合わせて、導き出した一つの仮説。すぐさまみんなに知らせないと、と近松たちはドッグカフェに集結。紀伊国屋たち救出作戦が始まる。
 
 処刑場で裁きを待つ紀伊国屋赤穂浪士たち。そこへ「待ちねェ!」と現れた大岡は、巧みな話術で見事遠山の悪事を暴き、紀伊国屋たちは無事に救出された。
 しかし、クーデターの犯人は未だ掴めていない。将軍を暗殺し、幕府転覆を目論む雪斬りの一人であることは推察できたが、肝心の人物像が見えてこない。そこで近松は、犯人をおびき寄せるために一か八かの大芝居を提案するのだった……。という感じのお話です。
 
 上記あらすじに入りきらなかったんですが、赤穂藩のリーダー大石内蔵助(谷口敏也)と、幕府御用人の笑わない男・柳沢吉保(坂元健児)もいます。

エンディング

 そのあといろいろすったんもんだしつつ、近松たちは犯人を突き止め、さらにもう一悶着。紀伊国屋が自らの力で雪斬りとしての呪縛を払い、運命を切り開いたところでエンディングルート突入。

前作ラストとの相違点

 前作だと強制蘇生*5後、紀伊国屋としての人生は捨てて、雪斬り退治に向かうというエンディングなんですよね。全員で忠臣蔵の芝居をする旅一座*6となって赤穂浪士も共に全国を旅しながら、世直ししていく。将軍は将軍として城に残るんですが。
 今回はそこが、将軍を含めた主要メンバーで、PT組んで討伐に行く形に変更になってます。
 

本編の感想

こちらの記事です。

 
 

*1:娯楽禁止令が出されているため、基本的に歌やダンス、落語などの一切の庶民の娯楽は禁止されている。ただし、将軍徳川綱吉の命により、犬に献上するものに関してはお咎めがないということから、「お犬様に献上する」ていで作られた芝居小屋のこと。

*2:生類憐みの令により、切腹は命じた者も罰せられる。そのため、切腹の場合は将軍本人が命じなければならない。

*3:いわゆる、刀余りのこと

*4:ヤスは、町のあらゆる事象をメモするように大岡に命じられている

*5:磁力を操る浅野の力で銃弾を取り出す、という荒療治。

*6:だから最後の曲がShow must go onなんですよね。