愛してやまない

観劇ログ、はじめました。

「天使にラブ・ソングを ~シスター・アクト~」

 ミュージカル 「天使にラブ・ソングを ~シスター・アクト~」観劇しました。
 最初から最後まで、悲しまずに観れる楽しいミュージカルは精神衛生に優しくて良いね。劇中のいろんな台詞や思い、姿勢に、生きるパワーをもらえる。カーテンコールでみんなで踊って、笑顔で楽しかったー!って言いながら帰る日々。生活が豊かになるね。良いミュージカルだ。新年現場始めがこれは幸先が良いな〜。

あらすじ

 黒人歌手デロリスは、クラブ経営をするヤクザもののカーティスの愛人。なかなかカーティスの運営クラブでショーをさせてもらえないことに不満を抱きながらも、いつかきっと夢を叶えてくれると信じていた。
 しかし、クリスマスイブに偶然カーティスが部下を殺害する現場に出くわしてしまう。慌てて警察に駆け込むデロリスと、口封じに跡を追うカーティスたち。フィラデルフィア警察に勤める高校の同級生"汗っかきエディ"の案で、デロリスは一時、修道院に身を隠すことに。
 
 反発するデロリスだが他に手もなく、仕方なくシスター・メアリークラレンスという架空の修道女のふりをする。だが、慎み深く質素な暮らしと無縁なデロリスが禁欲生活なんてできるわけもない。破天荒な行いに痺れを切らした修道院長はデロリスにひとまず聖歌隊入隊を言いつける。
 正直言葉にならないほど音痴な聖歌隊に、デロリスは一念発起。歌唱指導を始める。歌う楽しさに気づくシスターたちと絆が芽生え、聖歌隊はみるみる上達。まるでロックコンサートのような先進的なミサに、閑古鳥が鳴いていた教会へ人が集まるようになる。
 
 デロリスを通して、自分を信じる大切さに気づくシスター。人との繋がりを通して、他人を信じることを覚えるデロリス。そんな折に、とうとうカーティスたちがデロリスを発見する。シスターはデロリスを守るために立ち上がる。って感じのコメディミュージカルです。

感想

 舞台を拝見するのは今回が初めてです。映画は大ファンなので何回か見てるんですけどね。いろんな台詞にパワーがあって、前向きになれる。最初は全部一人でなんとかしようとしてたデロリスが、誰かに助けてもらうことを覚えて、素敵な人間になっていく。持ち前の明るさと、心からの友達がいるかどうかはまったく別の話だから。相手を信じないとできないこと。
 
 あんなに明るくて強いデロリスに、かよわいメアリーロバートが自分のロザリオを渡しながら「あなたには、助けが必要よ」って言う台詞がある。言葉はそっくり修道女だけど、言い方はとてもカジュアルで優しい。友達だもの。ここがねえ、いつも鼻がツーンとしてしまう。教会にすら厄介に扱われていた*1デロリスが、正面から手を差し伸べられるシーンなんですよ。
 
 デロリスたちは黒人で、教会や警察の人は白人。カーティスはユダヤ系とかなのかな。子分にはなんとも言えないラテンの血を感じるけれど。人種のるつぼ。見えないところにほんのちょっとだけ、所属コミュニティの線が見えてくる。教会買おうとしていたのはもしかしたらゲイカップルの比喩なのかな。男二人組でカトリック教会買い取るってパンチあるもの。カトリックは同性愛禁止だしね。そんな人種を越えた友情や繋がりが、音楽を通して生まれていくのはとても素敵だな。

デロリスのWキャストどっちもよかった。

 森久美子さんのチャーミングさ。体型含めて原作っぽいし、喋ってたら好きになっちゃうな〜!っていう、勝手に笑顔になるような明るい人柄が出てる。デロリスでしかない!
 アメリカンジョークのセクシーな笑いも、きっちり笑いに振り切ってるのがありがたい。笑っていいの?の不安がない。渡辺直美シュウウエムラの宣伝みたいなね。性をネタにするけど、男女どっちから見ても共通理解なのが海外作品の良さだし、それを体現する森久美子さんはすごいなあ。
 
 朝夏まなとさんのスター性は本当にね。こういうタイプもクラブにいそう……!踊れる方で……!と思った。エディに身を隠す話をされたときに「どうやって隠れるのよ」って口とんがらしてたけど、そりゃあ天下の朝夏まなとをそこらへんに隠すのは無理ですわ〜〜オーラがでてしまいますわ〜〜と思った。
 
 ここ森久美子さんだと、体が大きすぎて隠れられるかーい!な爆笑シーンなんですけど、同じ台詞でも全然違うな。まなとさんがまた細いのよ。クッキーモンスターの毛皮も普通に腕入ってるの、みんな普通に見てるけどあれ異様に細くないですか?子供用かと思ったんですが……。互いの違いをそれぞれ役にきっちり反映してるの良いなあ。

屋比久知奈さんの大ファンになってしまった。

 大きな一歩を踏み出すシスターメアリーロバートに泣く。みずみずしい透明感と少女性の中に、自我(自由意志)の芽生えがある。最初は猫背で俯いて、相手の表情ばかり窺っていたのに、"友人の"デロリスから自分を信じることを教えてもらって、しゃんと背筋を伸ばして嫌なことは嫌と言える人間に成長していく。心動かされないわけない!毎公演同じところで泣いてた。
 
 最後のミサライブで、メアリーロバートがデロリスからもらった紫のブーツちゃんと履いてるのがいいよねえ。しかもニーハイブーツじゃなくて、膝下のブーツにリメイクされてる。メアリーロバートのためのブーツになってるの!自由を手にして、自信までもらって、大きい声も出るようになったね。ただ言われたとおり・もらったとおりじゃなくて、メアリーロバートが自分の意思で選んで、そうしたんだろうなあ。
 
 屋比久さんの歌は音符が弾んでるみたいだ。スタッカートとかシャッフルリズムとかそういう意味ではなくて、歌への喜びを感じる。歌好きなんだろうなあ。観劇前の印象は「モアナの人」だったけれど、本当に素晴らしいミュージカル女優だったな。今年のミス・サイゴンのキム全員好きじゃん!スケジュールどうすれば!と悲鳴を上げている今日この頃。

林翔太くんのパブロ

 パブロは特別注目するようなメインキャラではないんですが、林くんの今までのラインナップにはあまりない、陽気でちょっとお馬鹿なギャングで新鮮だった*2。どんな役でも溶け込んでしまうはやしくんに驚かされる一方だ。林くんはガワ(入れ物)の許容量が大きいタイプだと思うので、次はどんな役が入るんだろうと思うととても楽しみ。
 他の人がどうかはわからないけれど、"主演じゃなくても良いジャニーズ"っていうのも、私には良いものに思える。主演も助演もできて歌って踊れるマルチな俳優!アイドルもできるよ!ってめちゃくちゃ設定盛りすぎで最高だし、この路線で行ってほしい。私をもっともっとミュージカルにずぶずぶにさせてくれ。
 
 シスアクのソウルフルな歌い方は、新しいアプローチで面白かったな。ソウル系のミュージカルってあんな裏声の使い方するんですね。裏声でパンチを出すって難しそう。あと踊りというか、ステップが当たり前に上手いんですけど、それがまたパブロとして良かったな〜。パブロって絶対踊りうまいもんな〜*3
 乱暴な物言いするカタコトの日本語だけど、不思議と嫌な気がしない愛嬌があって良かったです。シスアクに出てくる人はみんなかわいいんだけどね。
 
 

*1:メアリーロバートはそんなこと言わないけれど

*2:アンダースタディは明るかったんだっけ。見てないので話聞いただけなんですけどね。

*3:偏見