愛してやまない

観劇ログ、はじめました。

30-DELUX feat. 宇宙Six「のべつまくなし・改」

 30-DELUX ACTION PLAY MUSICAL THEATER featuring 宇宙Six「のべつまくなし・改」を観劇しました。
 前回コラボの「のべつまくなし」の世界観はそのままに、登場人物やストーリーを改変した(準)新作です。続編でも再演でもなく、改変。宇宙Sixコラボなので、もちろん今回もキャスト全員によるレビューショー付き。
 
 主観強すぎて脚本の本意からズレてたら嫌だな〜って思うんですが、もう自分の中で盛り上がっちゃったので、そのまま感想書きます。ネタバレ配慮しません。

あらすじ

 長いので別記事にて。

本編感想

 今作の、紀伊国屋復活とラストの旅立ちのシーンがすごく好きなんですよね。前作と変わったところなんですけど。感動と希望に溢れていて、観劇後に明るい気持ちになる。このまま残りの雪斬りを成敗するお話にも繋がりそう。未来が見えるストーリーって素敵ですよね。
 
 殺陣の人数といい、手数といい、素晴らしいなあ。サーデラさんの殺陣に慣れると、他所で見る殺陣が物足りなくなる。特に今回のラストシーンにかけての殺陣が本当に最高で、めちゃくちゃかっこよかったなあ。
 音ハメもだけど動きが立体的というか、躍動感がすごいんですよ。ただ斬るだけじゃなくて、上下に避けるとか止めるとか、複合的な動きがいくつも交差しててすごく興奮したし、釘付けになる!今までで一番すき。殺陣つけてくれた泉さんには本当に感謝してます。
 
 それから、いつも大勝利衣装をありがとうございます。ただの服が一つとしてなくて、柄・色・フォルム・ハリ感、すべてが良い。動いてもすとんっと形が戻るし、殺陣栄えもする。みんな似合ってるし、凝ってる。何の模様が入ってるんだろうってまじまじと見るのも楽しかったな。
 
 のべつまくなしのOPで、キャストがダンスしてるだけと思いきや、実は結構ストーリーネタバレしてるのがなかなか憎らしい演出だった。分かる人だけがにやっとするよね。

紀伊国屋の見る希望の世界

 今回の主人公は紀伊国屋文左衛門だと思うんですよね。前作との比較になってしまうんですが、今作の近松って序盤からそんなに弱くない。一番最初の出会いで、近松が”自ら”即興芝居を打って紀伊国屋を助ける。前作では仕込みだったことをうっかり聞かれて、口封じに殺されそうだったところを紀伊国屋が助ける、偶然の縁だったのに。
 
 大きく演出の変わった「私だけ」も、たくさんの人間をステージに立たせる必要はもう無くて、近松はちゃんと一人で歩いていける。本当に紀伊国屋を守れるのは近松だけ。もちろん紀伊国屋にとって近松も守りたい存在ではあるんだけど、近松紀伊国屋と「一緒に戦う仲間」なんですよ。
 
 でも紀伊国屋はそのことに気づいてない。雪斬りの呪縛に囚われているから。親方を守りきれなかった過去をずっと背負っているから。他人には死ぬな!って言いながら、自分はのっぴきならない時は死んでもいいと思っているんじゃないかな。今すぐ死ぬほどではないが、自分の命の価値はそれほど高くなさそうというか。武士として育てられた悪癖みたいなもので。
 そもそも紀伊国屋は自分が死んだら地獄行きだと思っているので、心中する若者みたいに輪廻転生は信じてなさそうなんですよね。その潔さが紀伊国屋の纏う儚さでもあると思ってる。
 
 その自己犠牲精神が、”もし何かあったら近松を斬って逃す“の約束に繋がってるんだと思うんですよね。ただ、その意図が前作だと「お前なら助けてくれるだろ?」だけど、改だと「もう二度と大切な人を失いたくない」の意味にとれる。親方という家族を失った後に、初めてできた友達だったから。死んだことにすれば、近松はまた新たな人生を選択できる。心中屋でいつもやっていること。
 
 喧嘩請負人の安兵衛を見た時に、親方の仇討ちをした紀伊国屋はどう思っているんだろう。自分と重ねたりしたんじゃなかろうか。
 刀を捨てて商人として生きていこうとしたのに、結局は刀を握ることになっている紀伊国屋にとって「『死ぬことと見つけたり』の武士道はもう違うと思う」と言う安兵衛は、新しい武士像としての希望に映ったんじゃないかと思うんですよね。
 
 だからこそ最後に、紀伊国屋が“死ぬことと見つけたり”世代の浅野から刀を渡されて、自ら雪斬りの呪縛を断ち切るシーンがより心に響くんですよ。新しい時代を切り開く世代として、紀伊国屋は生かされる。世代を越えて命が繋がる。
 
 雪斬りの残党を倒し、各地で世直ししながら争いのない世界を目指すというラストシーン。紀伊国屋と共に旅する仲間が、筆で世界を救う近松、“地獄の沙汰は話し合い”の大岡、命を大事にする武士の安兵衛、人々に笑いを届けたい郎府ってのも良い。武士と劇作家、役人だけじゃなくて、本来上位身分である将軍・郎府が加わることで、“いろんな身分や職業の人が、分け隔てなく暮らしていける世界”=“心中しなくても良い未来”への布石まで感じられるのも素敵ですよね。

レビューショー

 レビューショー、本当に楽しい。演目として毎回入れてくれるの神様ですよね。企画してる宇宙もだけど、許してくれるサーデラさんやゲストの皆さんにも。
 コンサートも好きだけど、劇団と一緒にこういう形のライブを見るっていうのも新しくて、これはこれで別物として好き。すべてのキャストの、一番得意な技を見せてもらえる上質な時間って本当に贅沢だと思うなあ。

五人編成の”Rocket Spark”

 宇宙Sixと室くんで、客席登場*1。衣装もピンクギラギラでお揃いな感じだけど、宇宙メンバーは黒の細身ボトムスで、ひらひらチュールはそのままつけてもらってる。シュッとしてる。山本くんがヘアバンドつけてるのもこの曲。
 
 フォーメーションとかしっかり付け直されてていっそ笑っちゃった。上手・下手位置も逆転したり、後半の振付も本家からちょっと変わってたよね。室くんいるから最後の宇宙Sixポーズ抜いたのかな〜とか*2

和風の新曲”Seasonz

 着物っぽい衣装にチェンジして女性キャストでダンス。その後宇宙メンバーが出てきてペアダンス。原くんが女の子の顔のぞみこみながら、頭すうっと撫でたところがリアコすぎてしんどい。和風でのべつ!って感じの曲だ。
 

30-DELUXメインの殺陣パート

 村瀬くんと清水さんがセンターで殺陣するのはずるくない?エモじゃん。村瀬くんの殺陣ってすごくしなやかで綺麗なイメージがあるし、清水さんは成熟したかっこよさ。不思議なんですけど、清水さんが振ると刀がすごい言うこときいてるなって感じがするんですよね。あまりに滑らかに振るからそう感じるんだと思うんですけど。

 初めて舞台に出演した時に立った劇場で、今作で一番の見せ場まかされてる村瀬くんの話聞いてから、座長との殺陣見せられるのはオタクなので感動してしまう。

“Shine”

 一度はけてた宇宙メンバーが白タキシードにお着替えして中央ステージに上がって歌唱。見るたびにダンスかっこよくなってる気がする。台宙見せてくれる山本さん、愛しさ爆発するよね。
 室くんはモノトーンの銀ピカ衣装。事務所から持ってきたんだろうな。
 
 1/26夜だけ、山本さんが台宙した後、後ろの男の子*3に「やばかったー!」ってにこにこ言ってて、二人で笑ってるのかわいかったんだけど、何が起こったのかはわからなかったな。かわいかったからなんでもいいや〜!

キャストについて

 宇宙だけじゃなくて、竹之内くんたちもダンスうまくなったな〜とか、ここ良いなあとかすごく成長が見えたんですよね。サーデラさんの俳優さんたちもこの半年間いろいろやってきたんだなってのを感じた。やっぱり殺陣もお芝居も安定感あるしね。大人組のアドリブ劇場への対応もしっかり笑いとってるし。
 ゲスト俳優の皆さんはもう経歴からして当然のうまさなんですけど。男声で壮大に歌い上げるのべつまくなしもかっこよかったなあ。

室龍太という器用富豪な男。

 大阪公演の落語はネズミの話。劇場ごとに変えてるそうで、すごいなあ。

 田舎に住んでいると家に虫が出るので、蔵に住んでいるネズミに褒美をやるから追っ払ってくれとお願いする。
 あっという間に虫を追い払ってくれたネズミに、「褒美をやろう。大きい包みか、小さい包みか。どちらか選べ」と主人は言うが、ネズミは「どちらも選べません」と答える。
 
「旦那、あっしらは中(チュウ)くらいの包みがええんですわ」
 
「……大阪は厳しいなあ〜。一晩寝ずに(ネズミ)考えたんですけど。おあとがよろしいようで。」

 大阪は厳しいなあ。の部分は日替わりで、「側転しよかな*4」「子守唄ちゃいまっせ!」とかの日もありました。
 
 室くんの何がいいって間のとり方ですよね。普通に喋ってても安心感あるんですけど、ツッコミまでのタイムコントロールが上手。空気を冷やさず、壊さず。
 お芝居もそうで、掛け合いに安心感があるし、自然でええなあと思いました。歌って踊れて動けて、喋りもうまいし、芝居もできる。ただ器用なだけじゃなくて、どれもちゃんとうまいんですよね。ずるいな〜!台宙たっかいし。
 
 あと室くんの殺陣ってちょっと上品さがあるというか、レイピアとかも似合いそうやな〜って思いました。刺突系の動きが見てみたい。

一番おいしい役、大岡越前では?

 キャラクターといい立ち位置といい、この人おいしいとこどりですよね笑。役人として最後しっかりと持っていきつつ、めちゃくちゃふざけてる。役として楽しいだろうな。ライダーベルトもバイクも知らぬ間にアップデートされてるし、松本幸大くんへの優遇がすごい!
 ライダーキックしっかり高くてびっくりしたな。お芝居も歌もすべてに安定感あるし、やっぱり松本くんはサーデラのまっすぐな正義感に合う。
 大阪千秋楽で「俺、参上!」って言ってくれるライダーオタクなところも良い*5
 
 前作では熱すぎてハイハイっていなされてたジャスティスポーズが、今作で妙に流行ってるの笑うんですけど、絶対犬屋敷さんが要所要所でジャスティス入れてくれるからなんですよね。熱烈フォロワーを得たジャスティス。
 
 そういえば上手のポールに、松本くん専用のスライダーみたいな筒作ってありますよね?他の人誰も使ってなかったので、完全に松本くん用なんだな〜と思った。手痛くなっちゃうのかな。

原くんのおかげで演劇の未来が明るい。

 シンプルにお芝居が良すぎる。一見破天荒そうに見えて、実は一番冷静な役回りを正統派の演技で演じきってる。安兵衛って、意外とふざけてないんですよね。
 
 原くんってお芝居のウェイト調節もうまいな〜と思ったな。軽薄でもなく、重すぎない役自身の重量。だから、堀部安兵衛としての説得力もありながら、こいつ気の良い奴だなって思わせる。馬鹿のふりをしていることがわかるのは、脚本の力もあるけれど、原くんの表情とか、台詞の言い方のおかげでもあると思うんですよ。長物の扱いもうまいし、やっぱり原くんのお芝居いいなあと改めて感じたなあ。演劇の未来が明るい。
 
 といいつつ、葉隠の”愛をもってお姫様“って歌うところ、めちゃくちゃアイドルだから軽率にときめいちゃうんですけどね。

江田くんのビジュアルが良すぎる。

 近松の性格が少し変更されているのが、江田くんが昨年に主演含めて外部舞台に出演して、大きく成長したところを買ってくれての書き直しだったら泣けちゃうなと思ってた。
 
 処刑場で紀伊国屋の縄解いた後に、安否確認するんですけど。体ぺたぺた触って、着物の胸元直してからほっぺたもぺちぺちしようとするのがかわいかったな。
 やめろや〜って照れ隠しに叩かれる日もあれば、むいってほっぺ挟んでる日もあって。えだりょだね……。
 
 ところで、エンドクレジットの振付で、いっとんさんは一曲だけって表記されてたんですが、残り全部えだりょ振付なんですね。

山本亮太の話をします。

 “のべつまくなし”の剣持って踊るところで、下手に移動しながら刀回して戻って、首の周り通すところで、山本さんだけちょっとウェーブっぽい動きにしてるところがめっちゃくちゃ好きなんですけど、伝わります?

殺陣が良すぎる。

 ラストの殺陣シーンが“噂の200手”*6のことだと思うんですが、見応えしかない。もちろんそれ以外の殺陣も、めちゃくちゃ良かったー!
 
 私は山本くんの殺陣が一番、人を殺めるための殺陣っぽくて好きなんですよ。殺陣って個性出るじゃないですか。刀の振り抜きと止め、加重の掛け方を見ていると、緩急がすごいんですよ。荒々しくてかっこいい。ダイナミック。でも雑じゃないのは本人の体の効かせ方なんだと思うんですけど。
 身のこなしは軽いのに、ふと下に向けた刀にぐっと重さが出る。振ってる時は軽そうなのに、止まると重量があるんだなってわかるんですよ。刀の振り方は一言で言うと「容赦ない」って感じ。差し違えてでも、っていう心意気が刀にのってるのが伝わる。最後滑り落ちるみたいに体が倒れ込むところまで含めて、すべてが良い。このラス殺陣だけでチケット代払える。最高だったな……。
 
 山本さん絶対、刀握ってる時の方が歌良いんですよね。というか殺陣してる時が一番上手なの、いっそ役者の鑑なんじゃないかと思ってしまうんですが。
 リユニオンのメロディーラインは前回に比べてだいぶ変わってたけど、私は今回の方が聴きやすくて好きだな。大阪初日はそろそろ喉危ないんじゃないかと心配してたんですが、翌日復活してきたのもプロすぎて最高でしたね。
 

紀伊国屋が生きている感触。

 山本さんが地味に日替わり要素入れてくるの好きしかないんですよね。唐突に登場時片手ロンダート入れてくる*7のもそうなんですけど、演技プランも日によってマイナーチェンジがある。討ち入りコーディネーターとして階段に座っている時とか。「まっ、全部仕込みなんですけど」ってフラットなお芝居の日もあれば、してやったりとにやついている日、にししっと完全に笑っちゃってる日もある。
 毎日、役の範囲内でいろんな“らしさ”を表現してくれるの、ちゃんと紀伊国屋が生きてるんだなあって感じがする。山本さんのそういうところ、本当にすき。
 
 前まではそんなに演技変える印象なかったけど、その時の空気とか自分の機嫌とか、周りからキャッチする感覚とかも反映してお芝居してるのかな〜と思うと、おもしろいな。目移りしてる場合じゃないや。
 

絶命シーンの演出。

 将軍と近松を庇うシーン。銃で撃たれても決して刀は離さないところが、雪斬りとしての呪縛を感じて良いなって感じだったんですよね。絶命の瞬間に刀がごろんと地面に転がる。その音にハッとする。近松の絶叫が響く。
 
 一度刀が靴にひっかかって地面まで転がらなかった公演があった*8のでそれを理由に修正かけたのか、先に刀離しちゃったのかは定かじゃないんですけど、大阪千秋楽では「近松を掴んで苦しんでから、絶命の瞬間にぱたんと左手を離す」という演出に変わってたんですよね。手が落ちる。コツン。静寂に響く、地面の音。
 私はあの絶命の瞬間に無機物の音をたてるのが、とても演劇的で好きなので、これもよかった。直前に、近松の手を最期の力振り絞ってぎゅっと握るのもすごく痛々しさがあって、グッときたなあ。

レビューショーのアイドル供給。

 レビューショー終わりに毎回上半身のお洋服をご開帳してくれはるんですけど(ありがとうございます)(腹筋すごいな)。大体後ろ向いてボタン外しといて、音楽に合わせてばーん!って振り向いて見せてくれるんですよ。
 それがね、大阪初日で前向いたままボタン一つずつ外していくのが、も〜〜〜めちゃくちゃ最高で死んだ。膝から崩れ落ちるかと思った(私が)。とんでもないアイドル……。勘弁して。

感想まとめ

 初見の時は、場面切替が多い分、展開やテンポが速く感じてたんですが、二回目以降はそんなに気にならなくなったな*9。私が前作に慣れてた分の違和感かもしれない。そもそもよくこの尺で収めてるな、という分量のお話なんですけどね笑。
 
 複数回観ているのに、それでもあともう一回、二回と見たいなって思うのは、毎公演明らかな成長が見えるからというのも大きいんだろうな。夜公演やってから翌日の昼公演で即修正してくる舞台なんて、そうそう出会えないんですよ。
 こんなに推しがおいしい舞台ってないな、と思いながら毎公演楽しんで観劇してました。本当に、ありがたい現場だ。
 

日替わり・挨拶レポと前作感想

大阪公演の日替わり・挨拶レポは下記記事で。

 
前回ののべつまくなしの感想は下記記事で。

 
 

*1:これブリーゼ二階席だと一階通路ほぼ見えないので、声だけ聞きながら虚空を見つめて冒頭の振付踊るオタクの図になっちゃうの、すっごいシュールだった。

*2:抜いてた、よね……?ちょっと記憶怪しい。抜いてなかったらすいません

*3:大成くんかな?衣装変わるとわかんなくなっちゃう。ごめんなさい。

*4:登場時に側転して、「側転するだけでこんなけ拍手もらえるんやったら、ずっと側転しとこかな」というくだりがある。

*5:仮面ライダー電王は私も好きなので嬉しい。

*6:ゲネや公開稽古等で行われた取材で発言

*7:1/26昼・夜

*8:1/26昼公演かなと思うんですが、違うかもしれない

*9:大阪初日は本当に台詞のテンポ速かったんじゃないかな、とも思えてくる。